夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。

「変わらないね
ウサギも、この部屋も…」



目の前に

ユメカがいる



画面越しじゃない



ちゃんといる



「ユメカ、なんか飲む?」



「うん、じゃあ温かいのがいい」



「やっぱり寒かったんだろ
ずっと待ってたの?」



「んー…そんな待ってないよ
ウサギの方がずっと待ってたでしょ」



「え、あ…まぁ…
うん、ずっと待ってた」



この1年

ずっと

待ってた



ユメカが帰って来るのを



「じゃあ、感動の再会だね!」



「そーだな」



ユメカも変わらない

かわいい



「友達からもらった
旅行のお土産のお茶だけどいい?」



「うん
アレ?
こんなカップあった?」



色違いのお揃いのティカップ



「ん?
もしかして、ウサギ…」



ユメカがよくここで

料理を作って食べてた時は

適当な食器でそれぞれ食べてた



同じカレー食べてても

大きさの違う皿



飲み物も

オレがグラスで

ユメカはマグカップ



「ウサギ…
私がいないうちに
カノジョ、できた?」



「は?」



「だって…」



ユメカが食器棚を覗いた



「コレも…コレも…あ、コレも…
ペアじゃん!
あ、箸も…」



「うん、少しずつ揃えた」



「ん?ウサギが?
それとも…カノジョ?」



「オマエ、忘れたの?
帰って来たら一緒に住むって…」



「え…」



「あ…歯ブラシもあるよ」



「え…ホントに…?」



「うん、もしかして気が変わった?」



「ん…まだ、好き?

私って、まだカノジョ?」



「は?
ずっと言ってただろ!電話でも

オマエ、冷めてないよね?
気持ち変わったとか言わないよね?」



「うん…
変わってないよ

変わったのは
身体の傷ぐらいかな…

やっぱり傷になっちゃったけど
いい…?」



「そんなこと、ぜんぜん気にしてないし…」



「ウサギに傷見られるの、ヤダな…」



「ヤダ…って言われても…
カレシだから、いずれ見るよ」



少し赤くなったユメカが

かわいかった



ユメカが目の前にいる



すぐ近く



触れてもいいよね



今度はオレから

ユメカを抱きしめた



「感動の再会なんだから
もぉちょっと喜べよ」



「うん…」



ユメカがうつむいた



「え…泣いてんの?」



「うん…だって…」



「だから、傷なんて気にしな…」



「だって…嬉しんだもん

ウサギが待っててくれて…

ウサギにまた会えて
ホントによかった」



「うん…
帰って来てくれて、ありがと」



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