夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。

波の音が

私を宥めた



「うん、ごめん…

ウサギじゃ、ダメなんだ」



ぐるぐる回って絡まった何かが

ゆっくり

ほどけていく感じ



「なんで?
オレのこと、キライ?

オレは…

オレは、好きだよ
オマエのこと…

毎日考えてるよ
ユメカのこと…

心配だよ

ユメカ、カラダ大丈夫かな?
ユメカ、無理してないかな?って…


好きだよ

…ユメカ…」



ユメカ



前も呼んでくれたよね



ウサギの心の中では

いつも

私は



オマエじゃなくて

ユメカだったんだ



いつから

毎日私のこと考えててくれたんだろう?



いつから…



いつから

私をカノジョにしたいと思ってくれたんだろう?



いつから

好きとか…



「ありがと
私、ウサギといると楽しいよ

心配してくれて、ありがと
心配かけて、ごめんね

でも大丈夫

私ね
好きな人いるの

だから…
ウサギは
心配も同情もしなくていいよ」



秋の風の音

秋の波の音



夏の音は

どんなだったのかな?



日焼けしたウサギを

思い出した



毎日病院に来てくれた



よく言い合いにもなるけど

楽しかった



みんな私が病気だってわかると

心配してくれて

優しくしてくれて

同情される



ウサギに

そぉされたら



同情でも

好きになっちゃうよ



好きになっちゃったよ



勘違いするよ

好きにさせないでよ



ウサギのこと

好きになったらダメだ



私は

いつどーなるかわからない



ウサギのお父さんとお母さんみたいに

急にいなくなったら



またウサギは

寂しい思いをする



だからウサギは

同情でも

私を好きになったらダメなんだ



だから私は

誰も好きになったらダメなんだ



ウサギが言うように

私は一生

カレシなんかできないんだよ



カレシなんか

作っちゃいけないんだよ



夢なんか



叶わない



「あ、そ…

オマエが大丈夫でも…
オレ、大丈夫じゃないから…

ごめん…

先帰って…

オレが誘ったのに、悪い」



ウサギにそう言われたけど

なんとなく帰れなかった



ウサギはずっと

砂浜で海を見てた



私は黙って

その後ろで

ウサギを見てた



「死なないから、帰っていいよ」



ウサギの背中が言った



「心配だから、帰らない」



「オマエは自分の心配してろ」



「じゃあ、ウサギが帰ったら帰る」



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