夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。
「あ、あとでお金払うから…」
「今日バイト代入ったからいい
コートの入荷とオレのバイト代振り込み
同じ日って…」
「私、別に買ってなんて言ってないのに…」
「欲しかったら買うしかないじゃん!
オマエ、欲しそうだったもん
ずっと見てただろ」
「え!ウサギずっと見てたの?」
「うん、雨降りそうだったから
すぐオマエのこと追っかけた」
見られてた
「オレのコートは来月だな…
今月はマフラーで我慢するか…」
ウサギがマフラーに顔を埋めて
ポケットに手を入れた
「ごめん
私が自分で払うから…
あ、でも、ちょっと待ってもらってもいい?」
「待つって、いつまで?
小遣い日?
オマエ、バイトしてねーだろ
自分で払うとか言っても親の金だろ」
たしかに…
もしくは
おばあちゃんからのお年玉
「お金ないなら
ありがとうって言ってくれれば
それでいいから」
ウサギの
優しさ
「お客さま
お待たせしました」
「金払ってくるから待ってろ」