社長の渇愛
食事が済み、外に控えていた御笠が後部座席のドアを開けた。

「ありがとうございます」
心花が乗り込み、亜伊が乗り込んだ。

「心花、煙草吸っていい?」
「あ、はい。どうぞ」

亜伊が煙草を吸い出した。
煙草の煙を窓の外に吐く。

足を組み、煙草を吸う姿をジッと見つめていた心花。

「カッコいい…////」
つい、言葉が出た。

「ん?何?」
「あ、いえ…/////」
また亜伊が煙草を咥えた。
亜伊の口唇に意識が行く。

(昨日、この口唇が重なってキスしたんだよなぁ…)

あの苦しくて、身体が熱くなって、酔ってしまうかのようなキス。

身体がブルッと震えた。

(や、ヤバい…////キスしたい////
…………って、付き合ってもないのに、何を…!!
てか、私…欲求不満…!?)

心花は頭を何度も振る。
そんなことを考える自分が、信じられないのだ。

「キスしたい?」
「へ!?」
「だって今、言ったじゃん!
“キスしたい”って」

「え?私、声に出てました?」

「やっぱ、そうだ!」

「え?」

「俺のこと、ジッと見てたから。
しかも、昨日キスした時のエロい顔してるし!
したいのかなって、カマかけてみた」
「なっ…////」

「キスしてあげてもいいけど、今日はキスじゃ終わらないよ?」
「え?」
「そのまま、俺のマンションに連れ去る」
「え?え?それって……」

「心花とのキス、ヤバいんだよなぁー」
「え?」
「スッゲー興奮すんの!
貪るの、口唇だけじゃ済まなくなる」
「あ、いや、それは…////」

「………だろうな。きっと心花なら“付き合ってもないのにそんなことできない!”とか思ってんだろ?」

「え?」
(何もかも、バレてる…)

「ほんっと…わけがわかんねぇ……」
亜伊の顔がゆっくり近づく。

「え……亜…伊」
「心花が、俺を奪っていく…」
「え━━━━んんっ…!」
口唇が重なった。

(だ、だめ…身体が…疼く……)
思わず、亜伊を押し返す。
しかし亜伊にその手を掴まれ、窓に押しつけられた。
「…………心花」
口唇を離して、額と額をくっつけた亜伊。

「だったら…今、俺の彼女になって?」

「亜伊…」
「ほら、心花……
“はい”って言って?
簡単でしょ?
“はい”って言えばいいだけ……」

「でも…」
「でもじゃないよ。
“はい”
ほら、言って?身体、疼いてるでしょ?
心花も、俺に抱かれたいでしょ?」

亜伊の視線が心花を捉えて離さない。

まだ出逢って、二日目。
なのに、心がもう囚われている。

いや、違う━━━━━━
心花も出逢ったあの時もう既に、惚れていたのだ。

「はい…」
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