社長の渇愛
【亜伊】

スマホの画面に映る、愛しい彼の名前。

慌てて、スマホ画面をタップする。

『心花、今大丈━━━━━』
「亜伊!!助けて!!」
『は?心花!?』
「助けて!助けて!助けて!!」

とにかく“助けて”しか言葉が出ない。
それでも必死に、叫ぶようにぶつける。

『心花!!?待ってて!すぐ行くから!!』


数分後、亜伊が駆けつけてきた。
「心花!!」
「あ、亜伊!!」

亜伊の胸に、飛び込んだ。
そして必死にしがみつく。
「良かった。たまたま近くにいて……」

「みーちゃん、誰、こいつ……」
「それ、俺のセリフ」
「は?」
「お前こそ、何者?」
「僕は、みーちゃんの恋人だよ!!」
「お前、バカ?
心花の恋人は、この俺!見てわかんねぇの?心花、俺にしがみついてんじゃん!」

「違う!!みーちゃんは僕の━━━━━」

「あーもー、うるせぇよ!!」
「━━━━━!!!?」
恐ろしく黒い雰囲気を醸し出した、亜伊。


ゆっくり仁朗に近づき、耳打ちする。
「お前、もう…用無し……!
ありがとう!これで、心花は俺だけのモノ!!」

「は?お前……何、言って……!?」
「御笠!!」
「はい」
「“あとは”頼むな!」
「はい、かしこまりました」


「心花、おいで?送るから」
「はい…」

ゆっくり歩き、心花の実家前に着く。
「じゃあね」
「あ、あの!」
「ん?」

「今日、会えませんか?
亜伊がお仕事終わってから。
何時でも構いません!」

「………」

「あの…」
「あ、ごめんね!遅くなると思うんだ。
きっと……夜中になる」
「夜中…」
「ほら、心花は日付変わる前には家にいなきゃでしょ?明日は俺も休みだから、ラブラブしよ?」

心花は門限があり、日付が変わる前には必ず帰らなければならない。
ストーカーの件があり、両親と決めたことだ。

「はい…
………じゃ、じゃあ!お泊まりしていいですか?」
「心花?」
「どうしても、亜伊と離れたくなくて……」

心花を包み込むように抱き締めた、亜伊。

「いいよ。じゃあ…仕事終わったら、連絡するね!」
「ほんとですか?ありがとうございます!
連絡、待ってます!」

亜伊は心花を抱き締めながら、ほくそ笑んでいた。
あまりにも、亜伊の想像通りに心花が動くから。

察しの通り、仁朗に心花の居場所を教えたのも亜伊。
全ては、心花を手に入れる為の策略だ。


(このまま、早く俺のところに落ちておいで……!)

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