社長の渇愛
「真田さん、君の彼と話す機会を君が設けてよ」
「え……?」

「実家……襲われたくないでしょ?」
桜田が、心花に耳打ちする。

「え……!!?」
「ね?よろしく!」
心花はそのままへたりこんだ。

「真田ちゃん!!?大丈夫!?」
如月が慌てて心花を支える。

「じゃあ…待ってるよ!」
桜田は、後ろ手に手を振りながら去っていったのだった。


「あ!御笠さん!」
昼休憩になり、御笠が一階に下りてきたタイミングで声をかけた。

「はい。真田さん、どうしました?」
「ちょっと、相談が……」
御笠のジャケットを掴み、懇願するように見上げる心花。

「━━━━━━ここなら、安易に誰も来ません」
会社脇のちょっとしたスペース。
そこに向かった、心花と御笠。

「今日いらっしゃった、桜田様って方のことなんですが…」
「はい。まさか、何か…!?」
心花は、桜田に言われたことを御笠に伝えた。

「━━━━━━そうですか…そう来ましたか……」
「私、どうしていいか……両親のこと心配ですが、かといって…桜田様と亜伊を会わせるのもなんか不安で……」

「わかりました。この件、僕に任せていただけますか?」
「え?あ、はい!」
「大丈夫。社長のこともご両親も僕が守りますから!」
少し微笑む、御笠。

「………」
「真田さん?」
「初めて…笑ってくれましたね……!」
「え……」
「御笠さん、とっても素敵な笑顔されてますね。
もっと、笑ってたらいいのに……」
御笠を見上げ、フフ…と笑って言った心花。

「……/////」
「そしたら女性社員の視線が分散されて、私もヤキモチが少し和らぐし……
御笠さんだって……」
「え?」

「亜伊と御笠さん、とっても仲良くて信頼感し合ってるから……ヤキモチ妬いちゃう……」
「え……?」
「あ!いえ!何もありません!」

二人が見つめ合っていると……

「なーにやってんのかなぁ~?」
声の方を見ると、亜伊が腕を組み壁にもたれかかっていた。
雰囲気が、かなり恐ろしい。

「しゃ、社長!!?」
「亜伊!」

「おいで?心花」
両手を広げて言った、亜伊。
微笑んでいるが、雰囲気は恐ろしいままだ。

「あ……亜伊?」
「早く!!来いよ!!
お前が、俺に駆け寄らないと意味がねぇんだよ!!?」
口調や声のトーンがガラリと変わる。

「真田さん、早く行かれた方が……!!」
御笠が呟く。

「は、はい!」
タタタッと駆けて、亜伊の胸に抱きついた。

「やっぱ、思った通りだ」
「え?」

「俺は、心花の周り全てに嫉妬する」

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