社長の渇愛
「なんで、こいつなんだよ!?
いくら倉澤ガードが全国一っつったって、バックに黒羽がいなかったらこんなじゃないはずだ!」

桜田は訴えるように、黒滝に言う。

「は?
フフ…ハハハーーーッ!!」
突然笑い出す、黒滝。

「なん…だよ…!?」
桜田は怪訝そうに言った。

「ほんっと、サクラはバカだなぁー」
「は?」

「逆だよ!」
「え?」

「倉澤ガードのバックに黒羽組がいるんじゃねぇ。
黒羽組のバックに倉澤ガードがいるんだ」
「え……?」

「考えても見ろよ。
ボスは、俺達の弱みを握ってるようなもんだぞ!
お前がボスから情報を得ようとするように、ボスは色んな人間の弱みを握っている。
それをばら蒔かれて見ろ。
その人間の全てが終わる━━━━━━
…………お前は、そんなこともわからないのか?」

「━━━━━━━!!!?」

「だから、バカだっつってんの!」
カチッとバーの回転する音がする。

「竪羽……やめて…く、れ…」

「やっぱり………」
「頼む……竪…羽…」

「お前はこの世界に向かねぇ…」

「あ…あ……竪羽、やめ━━━━━━」

パァーーーーーンと言う銃声と共に、桜田が倒れた。


「三葉」
「あ?」
「始末、頼む。
てめぇの組員だ。後始末くらいしろ!」

「あぁ、わかってる」
三葉は一連の流れをただ黙って見ていて、静かに頷いた。

「ボス、行こ?」

「うん。
━━━━━━あ!そうだ!嘘だから!」
ドアに向かおうとして振り返る、亜伊。

「あ?」
「情報!その中の情報、ばら蒔いてもどうにもなんないよ!三葉の情報と見せかけて、微妙に違うんだ」
「だろうな」
「やっぱ、バレてたか!」
「俺はバカじゃねぇよ……これでも一応、三葉組の組長だからな」

「フッ…ただのおっさんかと思った」
小さく笑い、出ていった亜伊だった。


「ほんっと、恐ろしい魔王だ……!
倉澤 亜伊」



「ボス、ごめんね」
黒滝は、窓の外を見ながら呟くように言った。
「ううん。もういいよ」
「ごめん…」

「竪羽」
「ん?」
「おいで?」
両手を広げる、亜伊。

吸い寄せられるように抱きついた。
「悲しいよね…大丈夫。俺がいるからな!」
頭を撫でる、亜伊。

「うん、ボス…今だけ、名前……呼ばせて……」
「ん…いいよ」
「亜伊…亜伊は、僕を裏切らないで?」
「うん。
竪羽は、俺の大切な宝物!」

「フフ…彼女よりも(笑)?」
「心花は特別だから……ごめんね……」
「フフ…わかってるよ!
あ、久しぶりにまた三人で飲みに行きたいな!
亜伊と敬吾と三人で!
ね?敬吾!」

「あ、はい!」
「今は三人なんだから、ちょっとくだけたら?」
「いえ…」
「あー!もしかして、嫉妬してる?亜伊に抱き締められてるから」
「そんなこと…////」

「フフ…後から、敬吾も抱き締めてあげようか?」

「いえ…////
真田さんに、ヤキモチを妬かれるし……」
「は?心花?」

「僕と社長が仲良いから、ヤキモチ妬くっておっしゃってました」
「そうなの!!?嬉しいーー!!」
ガラリと表情が変わり、満面の笑みになる。

「フフ…亜伊は、モテモテだ……!!」
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