社長の渇愛
羨望と嫌悪
「心花、準備できたーー?」

「はぁーい!!」
ソファに座り声をかける亜伊に、奥から返事をする心花。

パタパタと足音をさせ現れた心花。

「亜伊、どうですか?」
亜伊の前に立ち、クルッと回った。

「━━━━━!!!?」
「亜伊、カッコ良すぎ…/////」
心花が亜伊のスーツ姿を見て見惚れる。
いつもスーツ姿だが、今日は一段とカッコいい。

「心花」
「はい」
「できる限り……いや必ず、俺の見えるところにいて?」

「え?は、はい」
「いい?本当は、ずっと俺の傍にいさせたいけど、俺は挨拶に回らなきゃだから。
せめて、俺の見えるところにいてね」
「わかりました」


今日は倉澤ガードのパーティー。
有名な政財界の人間や、黒滝達裏の人間もこぞって出席する。

ホテルのパーティー会場へ向かう。
亜伊と共に会場に入ると、一気に注目を浴びた。

亜伊に腰を抱かれていた心花。

咄嗟に亜伊のジャケットを握りしめた。

(凄い……凄すぎる…
いくら会社の社員だからって私、場違いなんじゃ……)

「社長、門脇大臣がお待ちです」
秘書の二瀬(にのせ)が声をかけてきた。

「ん。心花、ごめんね。俺、行かなきゃ!」
「はい」
ゆっくりジャケットを握っていた手を離した。

亜伊は名残惜しそうに、御笠と共に奥に向かっていった。

「真田ちゃん!」
「如月先輩!お疲れ様です」
「お疲れ!私と一緒にいよ?
私といれば、大丈夫だから………」

「え?大丈夫って?」
「………真田ちゃん、わかってる?」

「え?」
「真田ちゃんは、倉澤 亜伊の彼女だよ?
それだけで、凄い価値なの。
色んな人が興味を持ってるし、疎まれてる」

「はい…そうですよね……」

「私から放れないでね!」
「はい!」


如月と共に会場の端の方で、酒を飲みながら亜伊を見つめていた心花。

亜伊は、ずっと沢山の人物達と挨拶をしていた。

当たり前だが、社長としての亜伊は別人といっていい程、キリッとしていて近づきがたい。
心花は、まるで他人事のように見ていた。

「亜伊って、カッコいいですよね……」

「フッ!!
………何、言ってんの(笑)
真田ちゃんは、そんな人の恋人なのよ!」

「そうですよね。亜伊は、私の何処がいいんだろ?」

「理屈じゃないでしょ?」
「そうですよね」


「あー、ボスカノだぁー!」

聞き覚えのある声に振り向くと、黒滝がいた。
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