社長の渇愛
「え?」
「だって、お前が心花の彼氏を寝取ってくれたから、俺と心花は出逢えた。
“その事だけは”感謝してる」

「え?」
「でも…」
「え━━━━━」

亜伊の雰囲気が、黒く染まった。

「心花を傷つけたことは、許せねぇ……!!」
「━━━━━━!!?」

「さぁ、どうやって償ってもらおうかなぁー」

「心花が、星乎を蔑ろにするから」
「それは、心花が就活中だったからだろ?」
「てか!なんでいつも、心花ばっかなの!?」

「え?」

「心花の周りばっか、いい男が寄ってくる」
「光香、それどうゆう……」

「━━━━━やっぱ、そうゆうことかぁ~!!」
亜伊が突然、声を荒らげた。

「え?亜伊?」
「お前、心花の彼氏を奪った。
あくまでも、心花の彼氏だから奪ったんだろ?」

「え?じゃあ…星乎くんが好きだからじゃないってこと?」

「心花、こいつはこんな女だよ。
大丈夫。もう…二度と心花の前に現れないようにするからね!」
亜伊が心花の頭をポンポンと撫で言った。

そしてスマホを取りだし、御笠を呼び出した。

「社長」
「ん。こいつ、よろしく!」
「はい、かしこまりました」
光香を指差す亜伊に頭を下げる、御笠。

光香に向き直った。
「真田さんを気づけた代償、払っていただきます」
と、鋭い視線で言った。

「じゃあ、心花。行こ?お腹すかない?
イタ飯でも行く?」
「あ、あの!亜伊」
「ん?」

「光香、どうなるの?」

「んー、内緒!」
「……………もしかして、石脇さんと同じですか?」

石脇はあれから会社をクビなり、その上……他の所でも就職できないように裏で手を回された。
しかも石脇の個人情報は色んなところに晒され、いいように使われている。
カード情報や、銀行の口座等……
その為、石脇は勝手にカードを使われたり、銀行からお金を引き出されたりしている。
なので石脇は、今自己破産したのだ。

以前、黒滝の言っていた“その人間の全てが終わる”は、こうゆうことなのだ。

その事は後日、如月に聞いた心花。

「うん、そうだよ」
「そんな……」

「こんな風に心花を傷つけなかったら、ここまでしなかったよ。でもこいつ、また心花から俺を奪おうとしてたじゃん!」
「え?」
「わかんねぇの?
“紹介して”なんて、奪う気満々じゃん!」

「………」
亜伊の言葉に、心花は言葉に詰まる。



「心花、けじめつけよ!
これで、きっぱり“ここ”から元彼とこいつの存在消して!」
亜伊は心花の頭をポンポンと撫で言ったのだった。
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