社長の渇愛
渇望と依存~エピローグ~
「心花」
「んぁぁ……」
「ほら、もっと俺を欲して?」

「亜伊…もっと……」

二人はベッドで抱き合い、お互いがお互いを求め合っていた。

「はぁぁ…可愛い……」
「んん…」
「心花、キスしよ?俺を見て」

「ん…」
「ほんと、エッロい顔…俺、この顔大好き…!
俺しか知らない、心花の表情(かお)
可愛い……」




「━━━━━亜伊」
「ん?」
そして今は、亜伊の腕枕で横になっている心花。

亜伊の腕の中から見上げる。


「私…亜伊がいれば、もう…何もいらないよ」


「………」
「亜伊…亜伊…亜伊…」
心花が起き上がり、亜伊に跨がり組み敷いた。

「心花…?」
「だから、私を離さないでね」
そう言って、亜伊の口唇を塞いだ。

すぐに亜伊が体勢を変え、組み敷く。
「ほんっと、想定外な女だな、心花は」

「え?
ごめんなさ━━━━━━」
「そうじゃないよ。
幸せってこと!
心花のそうゆう言葉を待っていた。
もっと、もっと、もっと……俺を求めて、欲してね!」

この時ばかりは、心の渇きが癒えた気がした。



しかし、それは一時のこと━━━━━━

ずっと一緒にいれるわけではない。

「社長」
「ん?」
「お水、飲み過ぎです」
御笠が、亜伊の周りのペットボトルを見て言う。

「そう?でも、喉が渇いてしかたがねぇの!!」

「病的ですよ。この欲し方」

「だったら、どうすりゃあいい?」

「社長…」

「今更だけどさぁー」

「はい」

「…………受付にさせなきゃ良かった。
つか、最初から就職なんかさせずにマンションに閉じ込めりゃあ良かった」

「社長、何を……!?」


「だって受付は、色んな奴が心花の目の中に入るだろ?
色んな奴の声が耳に入る。色んな奴が心花の声を聞く。
あーーー!!!御笠、水!!!水、くれ!!」


御笠は、恐ろしさで震えていた。
亜伊の恐ろしいまでの、心花への執着と狂愛。

ペットボトルを一気飲みする亜伊は、本能に忠実な野獣その者だ。

御笠はそれ以上、何も言えなかった━━━━━


仕事が終わり、マンションに帰りついた亜伊と心花。
「心花」
「はい」

「今日、誰を見た?」

「へ?」

「誰の声を聞いた?」

「え?あの…それってどうゆう……」

「誰と話した?」

「亜伊?どうしたんですか?」


「心花を、俺“だけ”にしたい……」

心花を抱き締め、肩に顔を埋めて切なく呟いた。
< 37 / 38 >

この作品をシェア

pagetop