【短編】今宵、君の腕の中
「最近……」
「……え?」
突然、頭上から抑揚の無い低い声が聞こえて、顔を上げ隼へと視線を向けると、
「最近の姶良、何か変……」
真っ直ぐに見つめてくる隼の瞳に、何もかも見透かされそうな気がして……
私は視線を逸らして、俯いていた。
変って、何……?
変なのは、隼の方でしょ?
私に触れてくれなくなって。
笑顔も優しい表情も見せてくれなくなって。
この前は、私じゃない女の人と二人で歩いてた……
「私が変って、何……ッ!?
おかしいのは、隼の方じゃない!!」
「あい…「隼が私を嫌いになる日が来るんなら、恋人になんかならないで……幼馴染みの距離を保ってくれてた方がよかった!!」
揺れ動く感情が、もう抑えられなくて。
私は大粒の涙で頬を濡らしながら、隼に何も話させないうちに口走ってしまっていた。