【短編】今宵、君の腕の中
「それ……、本気で言ってんの?」
険しくなった低い声が、隼が怒っていることを報せてるけど。
……本気かどうかなんて、そんなこと私にもわからない。
でも、隼に嫌われるくらいなら、幼馴染みのままの方がよかったのかもしれないね?
だってそれなら……、
恋人よりは離れてるけど、一定の距離を保って傍にいることは出来るでしょ?
「はぁー…、つーかさ?
俺が姶良を嫌いだなんて、誰が言った?」
隼が盛大に吐き出す溜息にさえ、体はビクッと震えてしまう。
そんなこと誰も言ってないけど、隼の態度からそう思えちゃうんだよ……
またもや、だんまりに逃げる私は、更に俯いていた。
「そんな風に黙るんなら……、
答えたくなるようにしてやろうか?」