【短編】今宵、君の腕の中
はぁ…。
溜息を吐いたところで、このモヤモヤが晴れるわけじゃないのに。
口からこぼれるのは、結局、溜息ばかり。
直接、隼に聞けたなら……
どんなに楽だろうか、とは思うけど。
最近、構ってくれなくなった隼に疑惑は増す一方。
あの人がいるから…、私は用無しなの?
だから私には、笑いかけてもくれなくなったの…?
隼は、仕事が忙しいから私に構ってる暇は無いんだ、って言い聞かせてきた。
隼の負担になりたくないから。
でも…、
本当は心が悲鳴を上げてる。
私だけを見て、
私だけに笑いかけてほしいって――…
いつまでも雑踏の中に突っ立っているわけにもいかず。
だからといって、真っ直ぐマンションに帰る気にはなれなくて。
私は行く当ても無いままに、また歩き出した…。