【短編】今宵、君の腕の中
恋人≠幼馴染み
その後……、
意味も無くカフェで時間潰して。
冷えていくばかりの心とは裏腹に。
同じくらい冷えていた体は、暖房の効いた店内のあたたかさに順応し解されていた。
バッグの中で震える携帯電話に気付かないフリをするのも、限度があるし。
さすがにそろそろ帰らないと……
いくら何でも、隼だって心配してくれてるよね?
ほのかな期待を抱いた私は、帰るために席を立ち上がっていた。
最終電車を降りて少し歩くと、駅から5分と程近い場所にあるマンションの7階に、隼の部屋がある。
ここから更に2駅先に、私の実家があるけれど。
……そこにこそ、帰りにくかったりする。
隼は恋人の関係になる前から、うちの両親のお気に入り。
幼馴染みっていうのもあるかもしれないけど。
なぜか私の発言より隼の発言を重んじるくらい、隼に厚い信頼を寄せていたりする。
だから、この半同棲状態だって親の方が乗り気だったりするし。
今の私、どこにも逃げ場がないんじゃない……?