【短編】今宵、君の腕の中
気後れしつつノソノソと歩いてみても、すぐにマンションの入口は見えてくる。
隼に対峙する決心もつかないまま、何とも理由の付けられない溜息を吐いた瞬間。
マンションのエントランスから漏れる光で、微かに見えたのは……
入口脇の壁に寄り掛かり、腕を組んで佇む隼の姿。
一際大きな音を立てた心臓に焦りを覚えながらも、口許が緩むのを隠せないでいた。
……少しは、心配してくれた?
だから…、こんなに寒いのに外で待っていてくれたの?
隼はスーツを着たままだし、仕事から帰ってきて着の身着のまま…ってことだよね?
「……姶良?…っとに、バカかッ!?お前、何時だと思ってんの?」
隼が私に気付いて駆け寄ってきたかと思えば、いきなりスゴイ剣幕で叱られて。
まるで私は、子供のように身を竦めてしまう。