【短編】今宵、君の腕の中
思い返せば…、
隼は“幼馴染み”の距離を保っていた時も、“恋人”としての距離の今も、私に対する扱いは変わらない。
『子供扱い』
……それが一番、ピッタリと当てはまる言葉かもしれない。
5歳の年の差が隼にそうさせているのか…、私にはわからないけど。
それだけが、
昔から、隼に対して気に入らないことだった―――
「……ごめんなさい。」
まだまだ日付も替わっていない時間帯だけど、それでも。
項垂れて簡単に謝ってしまうのは、隼が好きだから。
……隼に嫌われたくないから。
「携帯にも出ないし…、何してた?」
「…………、」
帰りたくなくてカフェで時間潰してたなんて…、言えるわけなくて。
俯いてダンマリを決め込んでいる私に落とされたのは、怒気を含んだ嘆息。
それに即座に反応して、ビクッと揺れた私の体に隼は触れることもなく、ましてや笑顔なんか見せてくれるわけでもなく。
「もういい…、部屋戻る。」