【短編】今宵、君の腕の中
激動の中
「「……………」」
ソファーに座ったまま、私も隼も何も話し出そうとはせず。
暖房にあたためられた静かな部屋は更にシン…として、息苦しいほどに緊張を高める。
「ね、隼…?コート、脱ぎたい……」
それでも、オズオズ…と隼に声を掛けたのは。
離れると思っていた手が、部屋に着いても繋がれたままだったから。
返事が返ってくることもなくすんなりと離された手が、急激に冷たさを帯びたように感じられて、少しだけ悲しくなった。
……コートを脱ぐのなんて、あとにすればよかった。
また次に、隼が私に触れてくれるのはいつかわからないのに……
コートを脱ぐと、隼に気付かれないようにこっそりと溜息を吐いた。