お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 笑いながら紗子に言われ、居た堪れない気持ちになってくる。『商品企画部の涼本さんってやっぱりかっこいいよね』と話しだしたのは、わたしなのに。

「涼本さんは人気だよね。社長子息で、仕事のほうも商品企画部の時期部長候補でしょう? うちの女子社員みんな騒いでいるし」

「そうだよね」

「だけど、性格キツそうで近寄りがたい感じあるから、かっこいいと思って眺めているだけの人多い気がする。目の保養で、彼氏にするのは別の人でいい、とかさ。本気で狙っている人は少なそう。香菜は……やっぱり本気だよね?」

「ほ、本気っていうか……うん、とにかく気になって、好きっていう感じ」

 自分なんかが、相手にしてもらえるわけがない。恋人になりたいとか、そういうことを堂々と言っていいものなのかと考えてしまう。

 いまさらだけど、会社の食堂でこういう話をしている自分にそわそわして、周りを見た。

 誰かに聞かれていないかな、なんて思ったけれど、他の社員たちもご飯を食べながら会話をしていて、食堂内はざわざわとしているから大丈夫そうだ。

「連絡先とか聞けたらいいよね」

「そ、そんなことできるわけがないよ!」

「まぁ……あの涼本さんにとなると、勇気がいるか。『仕事以外のことで話しかけるなよ』とか冷たいこと平気で言いそうだし」

 確かに、普段聞いている涼本さんのイメージからだと、そういうふうに言われてしまいそうな気がする。
 でも会議室にいたときの彼の雰囲気なら、『ごめん、仕事以外のことで話しかけないでほしいんだ』とやんわり断ってくれそうかな……って、どちらにしても断られることしか想像つかないなんて!

〝ガーン〟というわかりやすい効果音が鳴り響きそうだよ。
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