お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
「君に渡したいものがあるんだ」

 すべての料理が運ばれて食事も一段落した頃、司さんが優しい笑みを浮かべながらそう言って、鞄からなにかを取り出す。

 小さな箱のような大きさ……?

 じっと彼の手もとを見つめていると、その正体がだんだんとわかってきて、わたしの胸が高鳴りだす。

「こういうものを送るのはもちろんはじめてだから、どれがいいのか本当に迷ったのだけど」

「司さん……」

 彼は眉尻を下げて笑みを浮かべながら、持っている小さな箱を開く。
 そこにはダイヤの光るシルバーリングがあった。

「君と一緒にいたい」

 司さんの言葉ひとつひとつが、わたしの鼓動と溶け合って胸が熱くなる。

「絶対に幸せにする」

 わたしを真っ直ぐ見つめる目が、優しく細められる。

「結婚しよう」

 うれしくて、あふれてくるときめきに包まれながら、わたしは「はい……!」と強くうなずいた。

 席を立った司さんがわたしのそばにきて、左手を掴んで持ち上げる。そして、薬指に指輪をはめてくれた。

 どんなアクセサリーよりも大切な輝き。
 指輪をじっと見つめた後、司さんへ視線を移して「ありがとうございます」と言った。

 これからも彼と優しいひとときを過ごせますように。
 そんなふうに思いながら、わたしは薬指で輝く指輪を撫でて司さんに満面の笑みを浮かべていた。
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