お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 こちらを試すような口ぶりに、俺は頬を緩めた。

「感情は自由だ。でも俺は香菜のことを絶対に離さないし、必ず幸せにする」

 パソコンをシャットダウンし、デスクを立った俺に神坂がふっと笑みをこぼす。

「なんだ、その自信……ははっ。俺、負け戦はしないからな。お前には勝てないってわかってる」

 なにか含みのあるような言葉だが、これ以上無駄に掘り下げる必要はないだろう。

 余裕のある顔つきで「じゃあな」と手をあげて自分のデスクへ戻っていく神坂の後ろ姿を見つめた後、俺は帰宅をする準備にとりかかった。



 帰宅すると、香菜がリビングのドアから顔を出す。

「司さん! おかえりなさい。今日はいつもより早いですね」

「ただいま。神坂が……先に帰っていいと言ってくれたんだ」

「そうだったんですね!」

 笑顔の香菜に少し歯切れ悪くなってしまったのは、先ほどの神坂とのやりとりのせいだ。
 嫉妬なんてくだらないとは思うが、多少は気になるものだ。

「……香菜」

 呼ばれて振り向いた香菜の腕を引き、唇にキスをする。驚いた表情をした彼女を追い込むように舌を絡めると、俺のスーツの胸もとをぎゅっと握りしめてきた。

 唇を離すと、香菜は頬を赤らめて息を乱している。

「司さん……?」

「風呂に入ろう。香菜も一緒に」

 俺がそう言うと、彼女は「ええっ!?」と慌てだした。

「君も風呂まだだろ?」

「ま、まだですけど、一緒にというのは恥ずかしいです……!」

「恥ずかしいだけ?」

「……い、意地悪な聞き方しないでください!」

「嫌ではないなら連れて行くよ」

 強引だけれど、合意だ。笑みがこぼれてしまうのを隠せないまま、俺は香菜をバスルームへと連れていった。
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