お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 わたしはただソファに座ってじっと待っていた。

 涼本さんの部屋に来てから、わたしの様子がどう見ても〝緊張しています〟というものだし、きっと変に固くなっているわたしを見て『気にするな』と言ってくれたのだろう。

 でも『下心のようなものはない』とあんなにはっきり言われてしまうと、少し虚しい感じもするような。
 いやいや、彼の親切心で泊めてもらうだけなのに。

 男女でも、こんなわたしと涼本さんの間になにか起こるわけがないじゃない!と、自分を心の中で叱った。

 二十分ほどでリビングに戻ってきた涼本さんは、乾かした髪がまだしっとりとしていて、Tシャツとスウェットのラフな格好だった。
 それが妙に色気があって、スーツ姿しか見たことがなかったから、オフ感の出ている涼本さんに胸の鼓動が再び騒ぎだす。

「風呂の湯は入るならためていいから」

「いいえ、シャワーで大丈夫です!」

 ソファへ近寄ってきた涼本さんから石鹸のいい香りが漂ってきて、それだけでさらにドキドキしてしまった。

 なんだかもう、耐えられない!

「では、入ってきます!」と、視線をそらしながら立ち上がったわたしは、着替えの入ったバッグを抱えるように持ってシャワーを使うために浴室へ向かった。

 寝顔を見てはいても、わたしの中で涼本さんは仕事のできるクールな男性というイメージが強い。
 変に意識をするのはやめようと思っているのに、社内でのイメージとは違う彼を見るたびにときめいていた。
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