お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 シャワーを浴びている間に、気持ちを落ち着かせよう。

 脱衣場でそんなことを思いながらカーディガンのボタンに手をかけたとき。
 コンコン、と外側からドアがノックされて、「ひゃっ!?」と変な声を出してしまった。

 別に服を脱いでいたわけでもないのに。

「バスタオルないだろ。持ってきた」

「えっ!? あっ、す、すみません、本当に……! ありがとうございます」

 慌ててドアを開けると、涼本さんが普段と変わらない淡々とした表情でバスタオルを持っている。

 わたしはというと、自分でも顔が真っ赤だとわかるくらい頬が熱くて、そんな自分に恥ずかしくなりながらバスタオルを受け取った。

 すぐにぽうっとなっちゃう自分、どうにかしたい。
 でも涼本さん相手にこうなってしまうのは仕方ないと思う!

 申し訳なさと恋心と、いろいろな感情がぐるぐるしているわたしは、なるべく急いでシャワーを終えた。
 そして持ってきた長袖のシャツとスウェット生地のジャージに着替える。

 髪は生乾きのまま首にタオルをかけてリビングへ向かうと、涼本さんはソファにタオルケットと大きめのクッションを運んでいて、わたしのためにソファを寝床として整えてくれているのだと思った。

「シャワーありがとうございました。タオルケットとクッションも、助かります」

「敷布団がないから、君は寝室のベッドを使ってくれ」

 バサッとタオルケットをソファへ置いた涼本さんは、わたしをちらっと見ながらそう言った。

「えっ!? そんな、わたしはソファで十分です!」

「シーツは変えたから平気だろ」

「いや、シーツの問題ではなくて!」

「髪、濡れたままだと風邪引くぞ」

 湿った毛先を触ったとき、近寄ってきた涼本さんがわたしの首にかけたままのタオルを掴んで、毛をはらうように拭く。

「ほら、まだこんなに湿ってる。ドライヤーでちゃんと乾かして」

「す、すみません……」
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