お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
3 同居生活のはじまり
 朝、今まで起きていた時間よりも三十分早くアラーム音が鳴る。
 体を起こしてずらした柔らかい掛け布団も、肌触りのいいシーツも、すべてわたしのものではない。

 住んでいるアパートが水漏れし、しばらく住めなくなってしまったので、社内で人気の男性社員、涼本司さんの部屋に居候させてもらうことになった。

 どちらがベッドを使うかで涼本さんと話し合った結果、一日ずつの交代ということになって、昨夜はわたしがベッドを使わせてもらった。

 気を遣ったりしなくていいと涼本さんは言ってくれているけれど、居候させてもらう身なのだし、できる範囲で掃除や食事作りをやっていきたい。

 時間は、朝の六時半。
 涼本さんの部屋に住まわせてもらうことになってから、今日が初めての出勤だ。

 早く起きて朝食を用意しようと寝室を出たら、すでに彼は起きていた。

「おはようございます。起きるの、早いんですね」

「おはよう。今日は早く目が覚めたんだ」

 ソファに座ってスマホを操作していた涼本さんは、寝癖がひとつもついていない。
 それを見て、自分の髪を触ってみた。毛先が跳ねているような感触があり、慌てて手でとかす。

「涼本さんのぶんも朝ご飯作ります!」

 気を取り直してそう言ったわたしに、涼本さんはなにか考えるような表情をした後、笑みを浮かべた。

「ありがとう。平日の朝はいつもコーヒーだけで済ましていたから、朝食を取って出勤するのは久々だ」

「そうなんですか。あっ、あまり期待はしないでください! 食パンと目玉焼きの簡単なものなので……」

「十分だよ」

 穏やかな返事をした涼本さんを見た後、キッチンへ足を進めようとしたところでそっと振り返った。
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