お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 だけど、もう涼本さんに惹かれている自分を隠し通すことなんてできないから。
 気持ちを伝えたい。

 そう思って焦がれるように涼本さんと視線を合わせていると、彼がそっとわたしの頬を撫でた。

「そんなふうに見つめられると困る」

「あ、あの……」

「俺は君のことをかわいいと思っているから」

「……それは、どういう意味ですか?」

 ドキドキと胸の音が激しく鳴る。
 聞いたくせに答えをもらうのは怖いなんて思いはじめて、手が震えそうになる。

 緊張しながら涼本さんの言葉を待っていると彼の手はわたしの頭を優しく撫でた。

「君に惹かれてる。最初はあのときの女の子と再会したことで懐かしい気持ちを感じていたけど、君と過ごしていて毎日そばにいてほしいと思うようになったんだ」

 涼本さんが、わたしのことをそんなふうに思ってくれていたなんて。信じられないと思うけど、彼は真剣な表情をしているから冗談などではないのだろう。

 目の前がチカチカしてしまうほど、うれしさが一瞬ではじけてわっと頬が熱くなった。

「わたし……涼本さんのことが好きです……」

 あふれていく想いを彼に伝えたくて、わたしはゆっくりと気持ちを言葉にした。

「ずっとわたし、涼本さんにドキドキして……」

 言い終わる前に彼の腕がわたしを抱き寄せた。
 ただでさえ胸の高鳴りで体が熱いのに、涼本さんの温もりにさらに昂る。

「かわいくて、どうしたらいいのか困るなんてはじめてだ」

 涼本さんはわたしを抱きしめながらそう言った。
 なんだか夢みたいで、彼の背中に腕を回して確かめるようにぎゅっとしてみる。
< 80 / 110 >

この作品をシェア

pagetop