お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
「今、神坂さんと仲良さそうに話していましたけど、どういう関係ですか?」

「えっ、関係? 別に神坂さんとわたしはなにも……!」

 これって、神坂さんとわたしのことを疑われている!?
 わたしの目の前に立っている女性たちは、ムッとした表情をしていた。

 神坂さんも整った容姿をしているし、女性にモテるのだろう。だけど、わたしと神坂さんはなにも関係がないので、必死に首を横に振っていた。

「神坂さんだけではないですよ。わたし、この前見たんです。あなたが涼本さんと一緒に帰るところを。おふたりに言い寄っているんですか?」

「いいえ、神坂さんとは普通に話をしているだけです。涼本さんは……」

 じっと見てくる女性たちに、わたしは言葉を続けるのを迷ってしまう。
〝涼本さんは恋人です〟って言う? 好きな人です、の方が現実味があるかもしれない。わたしの片想いってことの方が、普通に納得するのでは?

 途中で黙ったわたしに「どうしてはっきりしないの?」と言いたげな厳しい視線を向けてくる女性たち。

 一方的な気持ちです、と言ってしまおうかと思ったとき。
 わたしの肩にそっと手が置かれる。

「彼女は俺の恋人だよ」

 振り返ると涼本さんがいた。

 現れた涼本さんに驚いたのはわたしだけではなく、ふたりの女性も「涼本さん!?」と、目を瞬かせている。

「俺たちの関係になにか問題がある?」

「いえ、問題というか……彼女、神坂さんとも親しそうだったので……本当にふたりは付き合っているんですか?」

「そうだよ。彼女は俺の恋人だから、変な勘違いはしないでほしい」

 冷静な口調の涼本さんに、女性たちは渋々という感じだったが納得したようだ。
 これ以上余計なことを言うのは恐いと思うような雰囲気も彼は醸し出しているので、女性たちはそそくさと去っていく。
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