もどかしいくらいがちょうどいい
私はベットに寝っ転がり、天井を見上げる。
胸の中で抱きしめていた黒猫のぬいぐるみを掲げて、じいっと眺めた。
蛍光灯の光で出来た影が私の視界を暗くする。
「あれはどう考えても……、そうだよなぁ……」
いやいや、でも、でもさ!
あんな死ぬほど親の仇かってくらい睨まれてたひとが、だよ?
未だにちょっと信じられない。
でも、目は口ほどにものを言う、と昔の人も言い残したくらいだ。
彼の瞳が私を映すとき、言い逃れしようがないほど、それは。
「う~~~~ん……きみはどう思う?」
目の前にあるぬいぐるみに話しかけてみる。
返答がもちろん返ってくるはずもなく、仏頂面のままだ。ちょっと不細工なことろも可愛い……ん?
「……なんか、きみ、どこかで……見た、ような……?」
その瞬間。
私の脳内がフル回転する。
この黒猫のぬいぐるみに対して、過去の記憶を検索し始め──たった一件、ヒットする。
「あ……ぁ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「なんだぁ!? どうした、むぎ!?」
口から出た絶叫が家中に響き渡り、隣の部屋にいたお兄がドアを開けて飛び込んでくる。
しかし、そんな些事など全く私の耳に入るわけもない。
だって、そのぬいぐるみは──夢の中で見たクソデカぬいぐるみと、全くの瓜二つだったから。