仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
聞くことで精一杯の穂乃果は返事さえも返せない。なんだか一生懸命警察の人が話しているが今は全く理解が出来ない。目の前の現実を受け入れることが出来ないのだ。
事故かもしれない? 事故じゃない? 病気? 解剖? なんだか訳のわからない言葉が飛び交い更に穂乃果の頭の中はパニック状態に陥った。
時間なんて気にしていなかったからどのくらい泣いたかは分からない。ただ、こどものようにわんわん泣き崩れている穂乃果を警察の人が支えてくれ病院のロビーまで戻った。
「とりあえず座りなさい」
椅子に腰掛けると一気に現実味が湧いて来て、濡れた服が冷たく肌に張り付いている。
(ど、どうしてこんなことになちゃったんだろう……)
借りたバスタオルを身体に巻き、現実と向き合う。
この大雨でスリップしたのかもしれない。それか父はなにか病気でも持っていたのだろうか。そんなことは聞いたことがない。そしたらやっぱり寝不足や過労だろうか? やっぱり自分が代わりに桐ケ谷製菓に行けばよかった。ああ、そうだ、妹にはなんて言おう。いや、まだ言えない。こんなショックなことを伝えたら心臓に負担がかかるに決まっている。どうしたらいいのか、なにを考えても答えが糸のように絡まって出てこない。