仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
穂乃果に負けじと桃果も大きな声を張り上げた。
「だってそうでしょう! 今日もすごく苦しくなった。いつまでこんな生活なの? ドナーだって見つかるか分からない。 待ってる間にももか死んじゃうかもしれないんだよね!?」
ぼろぼろと涙を流してこんなに感情的な桃果は久しぶりに見た。胸が苦しくなる。替われるなら自分が替わってあげたい。桃果に自由に生きてほしい。
桃果の流れる涙を穂乃果は自分の袖で拭いながら両手で桃果の頬を包み込んだ。
「桃果。大丈夫。お姉ちゃんが絶対に守るから。ドナーだって見つけて見せる。だから死ぬなんて言っちゃ駄目。……私が桃果を死なせたりしない」
涙で視界が悪くなる。もう泣かないって決めていたのに最近はおかしい。直に涙が出て止まらなくなる。桃果の前で泣くこともずっとずっと耐えてきたのに。
「おねぇちゃぁぁんっ……うぅっ、ももか死にたくないっ……っ……学校にも行きたいし、お姉ちゃんと一緒にくらしたいよっ……!」
「うんうん、お姉ちゃんも桃果と一緒に暮らしたいし、学校にも行って授業参観に参加したいし、桃果と沢山やりたいことがあるよ。桃果なら大丈夫、お姉ちゃんがついてるんだから! ぜったい守ってあげるからね!」
ぎゅうと桃果を抱き締めた。こんなにも小さな体で一生懸命病気と戦って。絶対に死なせたりしない。絶対に大丈夫。そう自分に言い聞かせながら桃果をしっかりと抱きしめた。
「じゃあ僕は二人を守るからね。桃果ちゃんも、穂乃果も」
二人の重なる身体にもう一つ大きな身体がふわりと優しく重なった。どうして玲司に包み込まれると心強くなり、そしてすごく安心できてしまうのだろう。本当にこの腕が自分たちを守ってくれる、そんな気がしてしまう。