仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
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トントンと二回、社長室のドアを叩くと「どうぞ」と声が聞こえた。
「社長、只今戻りました」
「ん、おかえり。桃果ちゃんの様子はどうだった?」
「元気そうでした。お医者さんも最近は落ち着いているって言っていました」
「ならよかった。じゃあ穂乃果、これお願いできる?」
大量の紙山を渡され「かしこまりました」と受け取った。
「あ、奥様戻られたんですね。社長、ついに例の物が届きましたよ」
ニヤリと原口は口角を上げて笑った。手には茶色の段ボール箱。何か注文していたものだろうか。玲司も原口も嬉しそうに口元が緩んで表情が明るくなった気がする。
「ああ、やっとか。やっぱり巨大パネルなだけに結構時間がかかったね。さっそく飾らないと」
玲司はすぐに段ボールを開け中身を取り出した。穂乃果も気になり少し前のめりになって中身を見ると、声も出ないくらい恐ろしいものが入っていた。
「うん。ここに飾るのにちょうどいい大きさだ。写真たてのものもいい感じだね」
玲司が嬉しそうに手にしている物は随分前に無理矢理連れて行かれた教会で撮ったウエディングフォトだった。嬉しそうなタキシード姿の玲司の隣にはウェディングドレスを着た真顔の穂乃果が写っている。これのどこがいい写真なのか、さっぱりわからない。玲司は大きなパネルの方を歴代のお菓子パッケージが並ぶ大きな棚の一画に置き、写真たては自分のデスクに飾った。