仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「遠慮はなしだよ。僕が桃果ちゃんにあげたいんだ。だって、大切な家族なんだからいつでも笑顔でいてほしいと思うだろう?」
「そ、それはそうですけど……」
「もちろん穂乃果にも僕は笑顔でいてほしいんだよ」
優しく温かい目でじぃっと見つめられ言葉が上手く出てこない。玲司に見つめられるのなんていつものことなのに、何故か緊張してきた。緊張して、ドクドクと大きく心臓が動き出す。見られることが、恥ずかしい。
穂乃果はふいっと顔を横に向け「じゃ、じゃあお花はお言葉に甘えます」と小さく返した。
クスクスと笑う玲司の声が聞こえたが顔を見るものなぜだかできず、お腹もいっぱいになってしまったが、残すのはもったいないので無理やり胃袋にかきこんだ。
「ごちそう様でした。後片付けは私がやりますので玲司さんはお風呂にどうぞ」
「ん、じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
食べ終えたお皿をシンクに置いた玲司は「よろしくね」と言ってお風呂へ向かっていった。
(なんだかご飯を食べただけなのに疲れた……)
わしゃわしゃとスポンジでお皿を洗いシンクも綺麗にしてほっと一息ついたころには時刻は夜の九時を過ぎていた。