仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
特に会話をすることもなく、ただ二人の紅茶を飲む音、呼吸音だけが静かな部屋に聞こえるだけ。でもなぜか穂乃果の耳にはドクドクと自分のうるさい心臓の音も聞こえていた。
穂乃果の紅茶はあと一口でなくなりそうだ。
(これを飲んだら部屋に戻ろう)
最後の一口を飲もうとしたとき玲司の手が穂乃果の紅茶のカップを奪っていった。
「あの、玲司さん?」
「この一口を飲んだら一人で部屋に戻ろうと考えていただろう?」
「なっ……」
なんでそれを!? と言いそうになった。まさか無意識に声に出していたのだろうか?
「はい、おやすみって僕が帰すと思った?」
「えっ、と……」
「今日は疲れているのかなと思ってそのまま寝かしてあげようと思ったけど、穂乃果がわざわざお茶を淹れてきてくれて、こんな可愛いことされて我慢できると思う? 僕はそんな紳士じゃないからね」
カチャリと音をたて穂乃果のカップをサイトチェストに置いた玲司は穂乃果の肩をグッと抑え、ベットに押し倒した。
「れ、玲司さんっ! 私そんなつもりじゃないです!」
「穂乃果はそうかもしれないけど、僕が無理。こんなかわいい奥さん目の前にして抱かないで寝るとか無理だから」
「れ、れいじっ、んんっ……!」
唇が覆いかぶさってきた。玲司の舌がスルリと口腔内に入ってくると、同じ紅茶の味がしたのも一瞬、すぐに混ざり溶けるようにいつもの玲司との唇を重ねた時の味になる。熱くて、舌が溶けそうで、なんの味なのかは説明できない。けれど、いつもの玲司とのキスの味だ。
「穂乃果、キスが上手になったね」
頬を大きな手で包まれ褒められる。触れられた頬が心地よくて頬ずりしたくなった。