仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
17、衝撃の事実と繋がる想い
朝、深い眠りから少しずつ意識が鮮明になっていく。カーテンの隙間からもれる朝日が少し眩しい。
ぬくぬくと温かい布団と穂乃果を包み込む温かさ、それは最近知った温もりだ。それが妙にしっくりとして、トクトクと穏やかな心音が耳に心地よい。
「ん、穂乃果目が覚めたの?」
上から降ってくる玲司の掠れた声。いつのまにか寝返って向き合っていたようだがこれももういつものことだ。顔を上げるとまだ眠たそうな玲司が穂乃果をじぃっと見下ろしている。いつものことのはずなのに、なにも感じなかったはずなのに、なぜか今朝は玲司の顔を見ただけで顔がカーっと赤くなってしまったのだ。
自分でも気がつくくらい顔が熱くて慌ててばっと下を向いて玲司から顔を隠し、小さな声で「おはようございます」と返事を返した。
「今日はお父さんの月命日で仕事は休みだよね?」
「はい。度々お休みを頂いてしまってすいません」
「いいんだよ。僕は今日大事な会議があるから一緒に行けないけど、お父さんによろしくね。あと、寄り道せずにちゃんとタクシーで帰ってくること。いいね?」
相変わらず玲司は穂乃果に対して過保護のままだ。仕事の行き帰りは玲司と一緒だし、桃果の病院に行くときは必ずタクシーで行きなさいと念を押されている。
「分かってますよ。ちゃんとタクシーで行って真っ直ぐ帰ってきます」
穂乃果は先にベットから出るとひんやりと空気が冷たかった。
「先にリビングに降りてますね」
「ん、僕もすぐに行くよ」
その声を背中に聞きながらカチャンとドアを閉めた。