仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「西片さん、教えて」
知りたくて、少し強めの口調になってしまう。
「……あぁ。高梨印刷は確かに倒産した。それはまぎれもない事実だ。けどそのあとに桐ケ谷社長がここを買い取ったらしい。しかも自分のお金で」
「自分のお金……?」
「会社での役員会議でどうしてもコストのかかる小さな印刷工場に頼むより大きな印刷工場で頼んだほうがいいと会議で決まってしまったらしいんだ。大きな会社になると社長一人の力より複数の役員の指示のほうがでかいんだろうな」
「そうだね……」
理由を聞いてすとんと腑に落ちた。確かに小さな工場に高いお金を払うより大きいところに安く頼んだほうが会社の利益になる。それは会社を経営していくうえで当たり前のことだ。
「でもまぁ、社長はどうしてもここを守りたかったんだとよ。穂乃果の知らないところであの人は色んな人に頭を下げているとおもうよ。俺たちにももう一度ここで働いてくれないかって頭下げてきたんだよ。あのでっかい会社の社長さんが、どうしてだと思う?」
西片は優しく穂乃果に問いかける。あぁ、なんとなくだけれど西片の言いたい事が分かるような気がした。自分の為に、この工場を守ろうとしてくれたんじゃないかと。都合よく考えてしまう。
「もう俺からは何も言えねぇな。あとはちゃんと社長の口から聞いたほうが良い。穂乃果もそう思うだろ?」
「うん、そう思う」
全ての真実を玲司の口から聞きたい。確かめたい。