仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
18
タクシーを拾うにも大通りをでないといけない。早く、早くと歩く足がどんどん早くなる。
「穂乃果さん」
「え……?」
パシンっと後ろから手首を掴まれた。掴まれたところが強く握られ痛いし、気持ち悪い。驚いて後ろを振り返るとハァハァ息を切らした林田がいた。いつから後ろにいたのか分からない。ギトギトの油が浮いた顔はニヤついているような、怒っているような、瞳はねっとりとした視線で穂乃果を見てくる。
「は、林田さん……? どうしたんですか、は、離してください」
なにも言わずに林田はぎゅっと穂乃果の腕を握る力を強めた。見つめてくる瞳は鋭さが加わり、本能が感じた。怖い、と。怖くて力が入らず腕を振りほどけ無い。
「穂乃果さん、ずっと会いたかったんだな〜、穂乃果さんのことを思うと夜も眠れなくて、僕のここが破裂しそうだったんだな」
林田は握る穂乃果の腕をむりやり引っ張り自身のはりつめた股間に触れさせた。
「ひぃっ……」
気持ち悪い。嫌だ。怖い。なのに金縛りにあったかのように恐怖で動けない。
「最近穂乃果さんのまわりにいるあの男は誰なんだな〜僕という婚約者がありながら、浮気はいけないんだな〜」
意味がわからなかった。林田の婚約者になったつもりは一度もない。交際を断った事はあるが、まさか断りが通じていなかったのだろうか。林田は掴んだ穂乃果の腕を離さない。
「は、離してください……」
恐怖で震える身体から声を絞り出す。