仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


「僕はね、そんなお義父さんの話を聞いていて穂乃果って子はどんな子なんだろうってずっと気になってたんだ。お義父さんの葬儀の日、すぐに分かったよ。この子が穂乃果だって。いつもお義父さんが話していた通り、あの日誰もいない場所で君の涙を見た時、君がとっても我慢する子なんだってわかった。葬儀の最中は寂しさを顔に出さずに凛としていてしっかりしているように見えたけどね。そんな君を見て僕はお義父さんから聞いていた以上に穂乃果のことが知りたくて、近くにいてこの強がっている女の子を守ってあげたい、僕の腕の中では安らいでほしい、そう思ったんだ」


 玲司は穂乃果の頭を優しく撫でた。大切な宝物にふれるよに。ゆっくり、優しく、手の平が髪を撫でる。
 鼻の奥が熱く、ツンとした。


「僕は穂乃果の事が好きなんだ。ずっと君のことが気になっていた。興味って僕は言っていたけど、それは好きな人に対するこの人のことをもっと知りたいという感情だったんだ」


 あまりにも唐突すぎるラブコールを次から次へと浴び、穂乃果は唖然としてしまった。意味が分からなかった。玲司は最初から自分を愛していてくれていた、ということだろうか。動揺と困惑と歓喜がいっぺんに来てどんな表情をしたらいいのか分からない。黙っていると頭に触れてた玲司の手がするりと下に降り、表情が硬くなっている穂乃果の頬を包み込んだ。温かなほっとするこの温もり。もう何度も感じているこの温度が頬の硬さを和らげていく。

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