仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「僕と結婚してくれませんか?」
「……は、はい?」
聞き間違いだろうか。結婚してくださいと言われとような……
「だから、僕と結婚してください」
驚いて言葉も出ない。開いた口も塞がらない。
「聞いてましたか?」
玲司は思考回路が止まっている穂乃果の顔を覗き込むように顔を近づけてくる。
「っ、……私と貴方は今日が初対面でなんの関係も無いはずですが」
「初対面……そうですよね。急すぎますよね。信じれないのも無理はない。なら、こういった条件はどうでしょう。僕が君のことを一生守りますよ」
「は、はい?」
何を言っているんだこいつは、ナルシストなのか? と殴りたくなる衝動をグッと堪えた。守りますって桐ケ谷製菓が契約を急に切ったせいで高梨印刷は倒産になってしまったのに。父だってあの雨の中桐ケ谷製菓に行かなければ、なんて思うことは八つ当たりなのは分かってはいるけれど、そう思うしか今の自分を奮い立たせられない。そう思わないと今にも砂のお城のように少しの衝撃で崩れ落ちてしましそうだから。