仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


「それで今は特殊な加工がある商品パッケージを工場が担当して、普通の印刷パッケージは大手の会社に頼む形で落ち着いたんだ。高梨印刷には優秀な腕の持ち主がたくさんいるから取引先でも好評なんだよ」
「……そうなんですね」


 それを聞いて安心した。また従業員につらい思いをさせてしまったらとおもったから。桐ケ谷製菓の子会社として玲司が立ち上げてくれたなら今後の心配はなさそうだ。


「工場の事は納得してくれたかな? 他になにか聞きたいこととかある?」
「いえ、ありません」


 もうなにも聞くことはない。はっきりした。自分の気持に。もうこれ以上は玲司に迷惑をかけられない。工場も結果的には守ってもらい、桃果の治療費もだしてもらっている。穂乃果は常に玲司に守られていた。この男が憎い、そう思っていたから、地獄に落ちてしまえと思っていたのに、今は違う。いつのまにか憎しみは愛情に変わり、穂乃果は玲司を愛してしまっていた。
 地獄に落ちてしまえ、そんなことを思っていたなんて玲司に知られたら……そんな女が妻なんて嫌だろう。何度考えても自分みたいな女は玲司には相応しくない。


「玲司さん」
「ん?」


 どうしたのと玲司が顔を覗き込んでくる。目を逸らしたくなったが、なんとなくそらしてはいけない気がして、そのまま玲司を見つめたまま穂乃果ははっきりと口にした。


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