仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「私と離婚してください」
二人の間に重苦しい空気が漂う。玲司は驚いたようで、髪をくしゃりと握り髪の毛を乱した。
「……本気?」
「本気です」
自分は玲司に相応しくない。玲司にはもっと素敵な女の人と幸せになってほしい。
「僕が工場のことを黙っていたから?」
「……いえ、ずっと思っていたことです」
「僕は離婚しないよ。君に決定権はないって最初から言ってあるよね? 桃果ちゃんの治療費だってどうするんだい? これからドナーが決まればもっと金はかかる」
「それは、言ってました……桃果の治療費は私がたくさん働いてお金を集めますから」
はぁと深くため息をついた玲司は力強い瞳で穂乃果を見た。
「離婚はしないよ」
「……っ、でも」
玲司は立ち上がり穂乃果の手をとると歩き出した。