仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「この写真僕の赤ん坊の頃の写真なんだ。こっちが僕を産んで十四まで育ててくれた両親。交通事故で二人共亡くなっちゃたんだけどね。それで僕は子供のいなかった叔父さん、つまり桐ケ谷製菓の前社長夫婦に引き取られたんだ。その時は悲しくて辛くて、でも泣いちゃいけないって強がってたな。その時の僕の姿が穂乃果と被ったんだ。あぁ、この子もたくさん我慢をしているんだなってね」
「……そうだったんですか」
突然明かされた玲司の過去に驚きが隠せない。まさか同じように両親を失っていたなんて。十四まで育ててくれた両親を亡くし、玲司も一人だったのだと。そして十四からの育ての両親まで亡くしてしまったなんて、心が共鳴しかけてしまう。玲司も同じだったんだと。
「ごめん、僕は工場の事以外にもうひとつ穂乃果に黙っていたことがあったんだ」
「……え?」
これ以上にまだ秘密にしてきたことがあるなんて、なんだかもう驚くを通り越してなんですか? と普通に受け止めてしまう自分がいる。
玲司は鍵を使ってチェストの一番上の引き出しを開けた。ぺらりと一枚の紙が出てきた。穂乃果もよく見覚えのある緑色の用紙。婚姻届だ。
「え? どうしてここに? まさか出してなかったんですか?」