仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
婚姻届に興味のなかった穂乃果は玲司に勝手に出してきていいと言った。言ったけれど、まさか出してないとは考えてもいなかった。つまり自分達はまだ結婚していなかったという事だろうか? 玲司の頭の中は本当に考えても考えてもよく分からない。
「穂乃果がいつか僕のことを本当に愛してくれたら出そうと思っていたんだ。君が僕の事を嫌いで離れたいって言うなら今ここで破り捨てることもできる。でも僕は捨てたくない。いつか穂乃果に愛してもらえるように努力する。僕は何があっても穂乃果を手放す気は無いよ」
ずるい聞き方だ。嫌いなはずがないのに。玲司のことを愛していると気づいてしまったのに。そう、愛してる。愛してるから嫌な女の自分を見られたくないのだ。
「……じゃあ、破り捨ててください。今まで支払っていただいたお金は少しずつでも返します」
玲司の顔を見ると胸が熱くなって、きゅうっと締め付けられる。泣きそうになる。だからそっぽを向いた。顔を見たら決心が鈍ってしまいそうで。
「穂乃果、僕は君を手放すつもりはないと言ったよね?」
肩を掴まれるが顔を見ない。ぎゅっと目を瞑った。