仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
(いい子だねって、完全に子供扱いされてるわ……)
寝ればきっとすぐに下がるだろう。穂乃果はもう一度眠ろうと目を閉じた。
布団の中に籠もる熱、自分の吐く吐息もなんだか熱い。これが熱か、なんだか熱だと認めてしまったからかぐんぐん体温が上昇している気がする。ぼーっと身体が宙に浮いているような、頭がくらくらしてきた。
「穂乃果、開けるよ」
「はい」
目線をドアに向けるとお盆になにかを乗せ脇になにかを挟んでいる玲司が部屋に戻ってきた。
「氷まくらと薬を持ってきたよ。少し食べて飲もうか」
氷まくら、そういえばまだ自分が小さい頃高熱を出したときに母が冷たい氷まくらを頭の下に敷いてくれたっけ……懐かしい。
「少し頭を上げるよ」
後頭部を優しく持ち上げられる。玲司の厚い胸板が顔の目の前にきて昨日のことを思い出して頬がぶわっと赤くなるのが自分でも分かった。恥ずかしい。穂乃果だけが意識しているようで玲司は顔色一つ変えずに枕との隙間に氷まくらを滑り込ませてくれた。そっと頭を戻され氷まくらに触れる。ひんやりしてちょっと硬いところもなんだか懐かしい。
「さっきより顔が赤くなってる。熱があがってきたかな。少し食べれそうなら薬を飲もう。お粥を作ってきたよ」
「あ……すいません」
白い湯気がもわもわと見えた。わざわざお粥まで作ってくれたのだろうか。こんな可愛げも愛想もない自分にどうして玲司は興味が湧いたのだろう。こんなによくしてもらうのはいくら相手があまり好きではない相手だろうとなんだか気が引けた。