仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
車に揺られること二十分、未だに目的地に着かないようだ。動きやすいようにデニムに薄手のパーカー、足元はスニーカーで来たのだが、どれだけ遠いスーパーなのだろう。
「あの、スーパーって結構遠いんですか?」
「スーパー? スーパーには向ってないよ。家から五分くらいのところにスーパーはあるしね」
じゃあいったいどこへ?
「え、じゃあどこへ向ってるんですか?」
「ちょうどもう着くよ。楽しみだな」
「は、はぁ……」
なんの主語もない会話に頭の中にはハテナしか浮かばない。
「ほら、着いた」
「は……?」
目の前に現れたのはスーパーではない、住宅街を抜けたところにある小さな教会だった。周りは木々で遮られ、その教会だけが別世界のような孤立した雰囲気。外からでも分かる綺麗なステンドグラスがとても目を引いた。目的地はまさかここ?
「じゃあ行こうか」
穂乃果より先に車を降りた玲司が助手席のドアを開け、穂乃果をエスコートしようとする。いやいやいや、エスーコートうんぬんより本当にここに来たのか謎だ。間違いであってほしい。
「教会、ですか?」
穂乃果は車を降りない。降りたら……嫌な予感がする。
「そうだよ。今日の朝予約したんだ。ウエディングフォトが撮りたくてね」
いや、当たり前のように言うけれど、そんな形に残るような写真、絶対に撮りたくない!
「あ、じゃあ私は車の中で待ってますので、玲司さんお一人でどうぞ」
開けられたドアを閉めようとしたが玲司の大きな手に止められた。いくら引っ張っても閉まらない。