仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「玲司さんはいつ来てくれたの?」
「んーとね、確か昨日このパジャマを買ってきてくれて、その前の日は初めて来てくれてお花とこのクマを持ってきてくれたよ! お姉ちゃんと結婚したって聞いた時は嘘だと思ったけど、お姉ちゃんの写真も見せてくれたし、なによりお姉ちゃんの話をしている時の玲司さんがすっごくニコニコしてたから本当なんだなぁって!」
(昨日と一昨日、つまり自分が熱を出してるときにいつのまにか来てたのね。それに写真って……いったいなんの写真かしら)
油断も隙きもありゃしない。もう既に桃果は玲司のことをいい人だと思っている。仕方ないので穂乃果もそこは玲司はいい人で話を合わせることにした。
「そう、桃果が喜んでくれてよかった」
「今度は玲司さんと一緒に来てね!」
「分かったわよ。でも玲司さんは仕事で忙しいから時間が合ったときにね」
桃果は残念そうに「は〜い」と返事をした。かなり玲司のことを気に入っているみたいだ。
「じゃあ花瓶の水変えてくるから」
「うん、お願いします。長生きしてほしいんだぁ」
「そうだね」
声が震えそうになった。神様はどうしてこうも意地悪なんだろう。こんなに素直で優しい桃果をどうにか救ってほしい。そのためだったら何でもするのに。その手始めに自分の恋を売ったのだから。