仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


(ん? またメッセージ?)


 連続して送られてきたのは可愛い猫の「帰りますにゃ」スタンプ。おもわず頬が緩んでしまった。男の人がこんなにかわいいスタンプを使うなんて。
 タクシーがゆっくりとスピードを落とし玲司の家の前で停まる。あの黒光りしているカードで潔く会計を済ませタクシーを出た。
 ガチャリと玄関を開け「ただいま」といっても誰もいない。この大きな家に一人きりだ。


(ん? 誰もいないってチャンスじゃない?)


 色々家の中を見たら玲司の弱みの一つくらい分かるかも知れない。いつも余裕な素振りでなんでもさらさらこなしていく玲司だがきっと少しくらいなにかあるはず! 玲司が居ないことをいいことに穂乃果はこの家の探検を始めた。
 といっても一階は綺麗に片付いていて私物がなさそうなので玲司の部屋にちょっとだけお邪魔させてもらうことにする。バレたら掃除しようとしてましたと古典的な言い訳をすればいい。
 鍵も掛かっていない玲司の部屋に誰も居ないとは分かっていてもなんだか後ろめたさから抜き足忍び足になってしまう。


「お掃除させてもらいますよ〜」


 なんて言っておく。
 にしても、何もない部屋だ。玲司が穂乃果に与えてくれた部屋とはガラリと雰囲気が違う。ダークブラウンで統一された部屋。床も、大きな本棚も、ベットのフレームまで色が統一されシックな部屋だ。壁一面の本棚には経営学やらお菓子の本やらとたくさんの種類の本がずらっと並んでおり、デスクにパソコンとタブレット、一人で寝るには大きいダブルベット、その横にサイドチェストが置いてある。クローゼットの中も見させてもらったがスーツとワイシャツが几帳面に並んでいるくらいで下にある引き出しには靴下とネクタイ、それと下着しか入ってなかった。


(ぱ、ぱんつを無断で見てしまいごめんなさい……)


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