仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


 少し罪悪感のなかクローゼットを閉め、つぎはサイトチェストの引き出しを見ようと開けてみるが一番上は鍵がかかっていて開けられない。二段目は……まさかの避妊具が沢山はいっていた。


(ひいっ…まぁ、あれだけ顔がいいんだもの、女の一人や二人、いや、十人くらいいたっておかしくないわよね……み、見なかったことにしましょう)


 そっと引き出しを閉めた時なぜかチクリと胸が痛んだ。罪悪感……からだろうか。
 三段目はティッシュや爪切り、ハサミや文房具といってこれといったっものは出てこなかった。


(やっぱりこの鍵がかっているところが気になるわね)


 結局引き出し関係は全て開けてみたが空振り、最後に本棚を見てから部屋をでようと端から見ていくがなんだか難しそうな物が多い。本がズラッと並んでいる中、一箇所だけ写真が飾られていた。
 一枚は若い夫婦と赤ちゃんの三人の写真。場所は公園っぽい。もう一枚はこの家をバックにスーツを着た玲司と両親らしき人物との写真。今より若く見えるから成人式とかかな? でも笑った顔は今と全然変わらない。玲司の両親がいつ亡くなったのかは知らないけれどそこだけは同情する。狭いアパートの穂乃果でさえ一人でいる時間は寂しかった。時計の秒針の音がよく聞こえますます寂しさを募らせたのだ。きっと玲司もこんなに広い家に一人は寂しかったのかもしれない。だから結婚願望が強くなったのだろうか。そんなことは本人にしか分からないし、聞かないけれど。
 写真を見てしまいなんだか部屋を勝手に見てしまっている罪悪感が大きく膨れ上がった。


「出よう」


 写真にお辞儀をしてから玲司の部屋を出た。玲司が与えてくれた自室に戻りベットに座ってぼーっとする。時計を見てもまだ午後四時。ぐぅ〜っとおなかの虫が鳴った。


(あ……お昼ごはん食べそこねたんだった)


 そりゃお腹も鳴るわけだ。色んな事がありすぎて空腹感を感じていなかったのに座って一息ついた瞬間空腹を感じる。人間の身体って現金だ。

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