仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
今日もまたダイニングテーブルの端に向かい合いながらご飯を食べる。玲司は穂乃果の作ったもの全てを一口目を食べた瞬間に「おいしい」と必ず言った。おいしいと言ってもらえて悪い気はしない。
上品にご飯を食べる玲司をみながら穂乃果は聞きたいことが山ほどあった。
「玲司さん、いつの間に桃果に会いに行っていたんですか。一言私に言ってくれないと。今日病院に行ったら桃果が玲司さんのことを知っていて驚きました」
「ん、あぁ。早く妹さんに会ってみたくてね。君が寝ている間にささっと、駄目だったかな?」
「……いえ、ただ驚いて。なんだか妹にたくさん買っていただいてありがとうございました。久しぶりに桃果のあんなに嬉しそうな顔見ました」
桃果の満面の笑みが脳裏から離れない。あんなに喜んでいる顔は本当に久しぶりだったから。
「そうか、喜んで貰えていたなら良かったよ。もう桃果ちゃんも僕にとっても大事な家族になったんだ、これからは助け合っていこうね」
「あ、ありがとうございます。ご、ごちそう様でしたっ」
喉の奥がきゅうっと苦しくなった。その場にいるなんてとてもじゃないけれど無理だった。桃果を家族として大切にしてくれている、嫌いな男からの言葉が嬉しくて嬉しくて泣きそうになるなんて、自分で自分の感情を認めたくない。嬉しくなんか、無い。
感情を必死で呑み込みながら皿を洗っていると玲司が「先に穂乃果がお風呂にはいっておいで」と皿洗いを交換すると言われたが断った。
「じゃあ、先に入らせてもらうよ」
「はい、どうぞ」
皿を洗い終わり、ダイニングの上を綺麗に拭いていると玲司がお風呂から上がってきた。「穂乃果もどうぞ」と言われ「どうも」と一言返しお風呂場に向かった。
今日もたっぷりのお湯に身体を沈める。温かくて誰かに抱き締められている、そんな感覚陥り、ぶくぶくと湯船に全身を沈めた。