仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「穂乃果」
名前を呼ばれて反射的にその声の方に振り向く。
「また君は難しい顔をして、なにか考え事かな?」
「いえ、別に」
「そう、なら今夜」
玲司は口元を穂乃果の耳元に寄せて「いいよね?」と囁いた。ソファー越しに後ろから抱き締められて耳元のそばにあったはずの唇は穂乃果の首筋にキスをしてくる。もう分かっている。この結婚に穂乃果は拒否権はない、ということを。
黙って玲司に手を引かれ二階へ登る。穂乃果の部屋に入るなりベットに押し倒された。
穂乃果に跨がる玲司はふっと優しくそれでも瞳の奥からしっかりと見つめてくる。そう、いつもじぃっと穂乃果のことを見つめてくる。
「穂乃果」
「……はい」
「僕に抱かれている間は何も考えないで。ただ快楽に身を預けてしまえば良い。君はすこし頭で考えすぎだ。脳が疲れ果ててしまうよ。また熱でも出したら大変だ」
考えたくなくても考えてしまうのは今穂乃果に跨っている玲司がほぼ原因なのに。本当この男は出会った時から何を言っているんだ? と何回思ったことか。
穂乃果はキッと玲司を睨むが全く効かない。気にしていないようだ。