仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


「穂乃果、こっちを向いて」
(嫌だ、絶対向かない)
「穂乃果、こっちを向きなさい」


 全てを支配されてしまいそうな少し下がった声のトーンにおそるおそる目を開き玲司を見た。


「目を閉じては駄目だよ。言ったよね? ちゃんと僕に抱かれているところを見なさい、と」
「あ……」


 玲司は自身の服を剥ぐように脱ぎ、穂乃果を後ろから抱きしめた。なんの隔てもない、肌と肌がぴったりと密着し、そこから温かさがじわじわと広がってくる。背中越しに聞こえる玲司の鼓動がドクドクと穂乃果の肌にダイレクトに届いてきた。はぁと艶めいた溜息が穂乃果の肩にかかる。熱い。


(玲司さんの心臓の音が凄い。緊張……してるわけないか)
「穂乃果、顔を後ろに向けて」


 耳元で囁かれゆっくりと顔を後ろに向けると真剣な瞳の玲司と目がかち合った。


「んっ……んっ、ん……」


 唇を奪われ玲司の舌が入ってくる。歯列をなぞり、口蓋までも舌先で擦るように舐められた。こんなところが気持ちいいなんて、くすぐったいような、でも気持ちいい。息が苦しくなり口を離す。


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