仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


 玄関にあったシャベルを拝借させてもらい庭の手入れを穂乃果は始めた。手始めに今日は花壇の一部にパンジーを植えることにする。なにせ大きい花壇だ。一日じゃ終わらない気がする。
 雑草を全て抜き取るだけで一時間も掛かった。


「つ、疲れた」


 疲れたけど楽しい。今までは狭いアパートで花とは無縁の生活だったけれどやっぱりキレイなものはいい。心を明るくしてくれる気がする。土を柔らかく掘り起こしてポットから取り出したパンジーをそっと植えた。まだまだ大きな花壇の一部しか植えていないけど、スマホで調べたら今の時期にチューリップを植えたら春に綺麗に咲くらしい。今まで趣味なんてなかった穂乃果だがガーデニングが趣味になりそうだ。今度はチューリップの球根を買いに行こう。


「はぁ〜、やりきったわ」


 四色のパンジーが寄せ合い綺麗に並んでいる。自分で植えたからか妙に愛着が湧き、穂乃果はしばらくぼーっとパンジーを眺めていた。
 夕方の五時を知らせる懐かしいチャイム音が空に響く。


「あ、もう五時なのね」


 あっという間に時間が経っていたことに驚き、パシャリと一枚写真を撮り、綺麗に後始末をして家へ入った。
 綺麗に手を洗い夜ご飯の支度を始めることにした。冷蔵庫の中はいつも沢山の食材、冷凍庫にもお肉や魚がびっしりとはいっている。穂乃果が買い物に行かなくていいよう玲司が会社帰りに色んなものを買ってくるので、いつも冷蔵庫の中はパンパンだ。


「今日は豚の生姜焼きでいいいかしら」


 なんだかんだで穂乃果が夜ご飯を作り玲司が帰ってきたら一緒に食べる習慣が自然とついてしまっていた。


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