仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
「す、凄い。うちが印刷してた物まであるんですね」
「ちゃんと全部の商品を常に見れるようにしてあるからね」
「そうなんですか」
久しぶりにお菓子のパッケージを見て胸が苦しくなった。当時高梨印刷が担当していたお菓子のパッケージが何個もある。懐かしくて、悔しくて、涙が出そうになるのをぐっと抑えた。
「じゃあ穂乃果、原口を紹介するよ」
「あ、はい。お願いします!」
社長室の中からも隣の秘書室に入れる扉があり「原口入るよ」と扉を二回叩くと「はい、大丈夫です」と落ち着いたクールな声が聞こえた。
ガチャリと入ると名前だけしかまだ知らなかった原口がデスクから立ち上がる。玲司と同じくらいの男性を勝手に想像していた穂乃果だったが原口は玲司よりはるかに年配に見えた。多分五十代だろうか。白髪まじりの整えられた髪、凄くダンディと言う言葉が似合う男性だ。濃いグレイのスーツがよく似合う。
「社長、おはよう御座います」
「うん、おはよう。昨日電話で言ったと思うけど今日から僕の妻の事よろしく頼むよ」
「はい、かしこまりました」
深々と頭を下げる原口に穂乃果も慌てて頭を下げた。